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SHAKE

今この瞬間の熱を

広島に原爆を落とす日

 
 
正直な話、戸塚祥太が主演でなければ、私はこの作品を観ることはありませんでした。
 
しかし観終わって思ったのは、他のブログでも書かれている方がいらっしゃったのですが、この作品を「ジャニーズが主演の舞台(笑)」と思われるのがあまりに悔しいし勿体無い作品であったということです。戸塚さんがジャニーズとしてではなく1人の俳優として、カンパニーの皆さんも戸塚祥太を俳優として受け入れてくれて、全員が全力でこの舞台を作り上げていたからこそそう思えるのだと思います。
 
”ジャニーズ”という肩書きは、時に大きな役割を担うと思います。
ジャニヲタである私たちが、ジャニヲタというきっかけが無ければ踏み入ることのない所へと踏み込む一歩として。私たちが自分の世界を拡げる一つの手段として。
 
 

 

サンシャイン劇場での公演を3回観たんですが、1回目を観終わった時の”変な気持ち”に正直かなり戸惑いました。多分、突然陽気な音楽が流れ始めたり演者さんがミュージカルさながらマイクを持って歌いだしたりという独特な演出に戸惑いを隠せなかったからです。「頭で考えるな、感じろ!」と冒頭で言われますが既にそこから難しくて、突然のミュージカル調も考えちゃいけなかったのかもしれない・・・。考えてはいけないけれども、この劇はフィクションであり、『戦争』ではなく『恋愛』がテーマであることを忘れてはいけないなとも思います。でもって私の敗因は、時間軸がわからなくなってしまったこと。いやもしかしたらちゃんと普通にとんとん進んでいたのに、私が勝手に時間軸が云々と考えすぎてしまっただけなのかもしれないけど・・・考えてしまったのが・・・感じられていなかった、そういうことなのかな・・・

 

 
だってシリアスっぽい場面でいきなり「♪フッフーフッフッフー↑」って流れたらびっくりするし変な気持ちにもなりますよ!www慣れましたけども
 
そういえば、すごく好きな言い回しが幾つかありました。「〜なのですか、あなた。」とか、山崎のドスの利いた「〜だろうて。」とか、夏枝の「わたしのあなたしか。」とか。それと、個人的に戦前〜戦中くらいの時代の古典的すぎず、しかし現代的とも言えない凛々しい言葉遣いがとても好きなので、そういった意味では台詞に関しては終始たまりませんでした。強いて言うなら、後半になるにつれて敵性語が増えていったのが少し引っかかったかなあ…。あと、パンフレットを読むのが遅かったせいで、「とても短いけれど夏枝に対する愛が溢れている」という山崎の台詞がどこだったのか結局わからず非常に悔しいです。
 
『広島に原爆を落とす日』という舞台が、白系ロシアの血が流れるディープ山崎が、あまりにも戸塚祥太でしっくりきすぎているというかディープ山崎と戸塚祥太の秘めたる狂気の波長がここまで合うとは思いませんでした。この役は戸塚祥太を置いて他に一体誰ができるというのだろうか?それ程までにディープ山崎は戸塚祥太であり、戸塚祥太はディープ山崎であり、とても美しく狂気だった。だからこそ過去のディープ山崎・・・特に1998年版の、稲垣吾郎先輩のディープ山崎を猛烈に観たくて仕方ありません。こうして見るとなんとなく相通じる部分があるような感じがしますよね、戸塚祥太稲垣吾郎
そして戸塚祥太を始めとする役者さん全員の演技から放たれるエネルギーが凄まじくて、顎から滴る汗までもがはっきりと見える程の気迫、観る側も相応の精神力を持って観劇しなければ根負けしてしまう。ここ最近の舞台でいちばんエネルギーを使いました。しかし嫌いじゃない、この感じ。他のつか作品舞台も観たくなっている自分がいるのです。
 
 
☆☆☆☆☆
 
 
初め、「ディープ山崎は本当に面倒臭い男だな」と思いました。何をやるにも誰かからの理由付けがないと動けない、学歴を振りかざすプライドばかり高い薄っぺらい男だと。あまりの面倒臭さに、1回目を見終わった時は苛立ちモヤモヤした気持ちしか残らないくらい。
だけど本当は愛したかった、夏枝を、部下たちを、日本を。愛されたかった、夏枝に、部下たちに、日本に。しかし愛し方も愛され方もわからず、且つその両方に対して恐怖を抱いていたのかもしれない臆病な男。臆病であるが故に自分を誇示し続け、「たかが戦争ごときで女に愛を打ち明けるほどはしたなくない」と言い、しかし戦争に勝つための理由として夏枝に愛されようとした。彼にとって愛し愛されることにも理由がなければいけなかった。混血であるが故なのか、学歴を振りかざすところを見ても周りの目をかなり気にしていて。そんな山崎に対して最終的に「あなたのわたししか」原爆を落とすことはできないと言う夏枝は山崎とは対極でとても凛々しく、盲目的でありました。ドイツへ「戦争のための愛」がいつしか「愛のための戦争」になり、交わらないレールを曲げるにはもう原爆投下という選択肢しか残っていなかったのだと。戦争なんていうものがなければ2人のレールはわざわざ曲げようとせずとも交わる可能性があっただろうに。・・・にしてもあの出会い方で何があったらあんなに相思相愛となったのかが気になりまくるところであります。この辺の設定とかは小説のほうがしっくりくるかなと。文章でしっかり補完されているし。
 
 
ここまで書くことで幾分か頭の整理ができた、もっと早く書いておくべきだった、せめて千穐楽までに書いておくべきだった・・・!しっかし薄っぺらいことしか書けない!とにかく今すぐもう一回だけでいいから観たすぎて悶々としてます・・・
 
そういえば、「少佐!小倉(福岡県)に落としてください!何にもありませんが〜」という台詞にはちょっとどころでなくびっくりしました。小倉は大きな製鉄所があったから空襲も多くて原爆投下最有力候補にもなっていたんだよ・・・!確か前日に大空襲があって、その煙のせいで当日急遽候補地から外され素通りされた結果長崎に向かってしまったんだよ・・・!まあそれこそフィクションだしツッコんだら負けかなと思いつつ・・・身内が小倉にいてそういう話を沢山聞いていたので過剰反応してしまいました。と言っても観たことを後悔しているわけではないですし腹が立ったわけでも悲しくなったわけでもないです。しかし広島の特別公演はこんなもんじゃなくモヤモヤされる方は多かったかもしれないし、意外とそうでもなかったのかもしれませんが、広島特別公演は大丈夫だったのかと少し気になりました。
 
 
☆☆☆☆☆
 
 
『広島に原爆を落とす日』の小説版があるということで、2回目の観劇を終えてから小説を読み始めたんですが、できることなら3回目までに読了しておくべきだった・・・というのが読了直後の私の感想であります。中途半端に読みかけな状態で観てしまったために余計に混乱。こんなにも設定や登場人物の名前までもが違うとは思わなくて、ただ小説版を読むだけよりも余分に頭を使いました。でも普通にこれを読むだけでもすごく頭使う・・・。そして小説のほうが重たいです。けど読み応えはあります。
 
つかこうへい傑作選〈3〉

つかこうへい傑作選〈3〉

 

あくまで"小説版"であり"原作"ではないようです。というのも、小説(1986)のほうが舞台初演(1979)よりも後に書かれたもののようなので。

図書館に文庫本がなくてたまたま傑作選を借りるしかなかったのですが、「広島に原爆を落とす日」の続編「愛人刑事」も一緒に収録されているので結果的にこちらでよかったかもしれません。

 

 

以上、BGMはALI PROJECTの『戦争と平和』でお送りしました。